妊娠・出産について(2015・秋~2016.5月)
術後の日記ではなく、またも別の事を。
今回は、先天性心疾患を持ちながらの妊娠・出産について、私の経験を書いていこうかと。
成人してからの受診科
3歳での手術以後もずっと同じ総合病院(S病院)で検診を受けている。
18歳までは小児科、18歳以降は心臓血管外科で、
年に1度の診察と検査(心電図・レントゲン、心エコー)を受けていた。
20代後半の頃病院より「状態が安定している先天性疾患者は小児科でフォローすることになった」と言われ、また小児科に戻った。
妊娠出産時は小児科と連携してフォローしてもらった。
妊娠から出産まで
30歳、結婚の話が出てきた頃主治医の小児科医T先生に、
「結婚することになりそうですが、妊娠出産は可能ですか」
と聞いた。
当時、心臓に関して「先天性心疾患で手術して完治した」と思っていたので、妊娠も出産も問題なくできるだろうと思っていたが、
どこかでうっすら、「身体が持ちません」と言われたらどうしよう、という不安もあった。
T先生は「問題ないですよ。もし妊娠した時にはすぐに相談してください。フォローします。」
と言ってくれた。
結婚後4年がたち、妊娠が発覚。
個人の産婦人科での診断だったので、
「先天性心疾患で手術したことがある。今も定期検診に行っているS病院で出産したい。」
と伝えると、
「心臓の術後ならよくある。うちでも出産可能だよ。」
と言われた。
でも、心配性な私は頑として転院を希望し、紹介状を書いてもらった。
のちに、この判断をした自分を褒めてあげたい!!!、と思うことになる。
紹介状をもらい、S病院の産科へ。
心疾患について聞かれたので、
「心室中隔欠損で手術で完治した。しかし、自然分娩に耐えられるのか不安だ。」
と言うことを伝えた。
産科主治医に「手術で完治しているなら問題ないよ」と言われた。
しかし、30年以上「無理するな」「心臓に負担をかけるな」と言われ続けた自分の身体。
そうそう、自然分娩でも大丈夫だろう、と楽観できない思考になっていたので、
小児科T先生に詳しく相談することにした。
T先生に相談すると「産科の先生とよく話し合ってみるね」と言ってくれた。
次の妊婦健診でさっそく主治医から、妊娠36週で予定帝王切開になると告げられた。
妊娠30週を超えると、血液循環量が大幅に増える。
私の今の心臓の状態では、血液循環の増加に臨月までは耐えられないだろう。
心臓が耐えられるうちに帝王切開をする、 と言うことだ。
私は、出産時に心臓に負担がかかるんだろうと思っていたが、
妊娠中から大変な負担がかかるようだ。
そして、その負担に自分の心臓は臨月まで耐えられないかもしれない。
深刻に考えず心疾患の事をしつこいまでに訴えず「普通の妊婦」として過ごしていたら、と考えたらゾッとした。
それからは、産科主治医と小児科T先生が連携してフォローしてくれることになった。
妊娠中期くらいからは1~2か月おきにT先生の心エコーを受けた。
心エコーでは私だけでなく、胎児心エコーも行った。
胎児が先天性心疾患を持って生まれる確率が普通の人より高いからだ。
T先生は「高いと言っても、ほんの少し上がるだけ。遺伝ではなく、体質や体の造りが似るからね」と言っていた。
この胎児心エコーは保険適用だった(もちろん私のエコーも)。ありがたい。
妊娠中、せき込むほどの動悸が出たりむくみが出たりしたが、
大きく体調を崩すことなく帝王切開の日を迎えた。
臨月前の出産で子供が2500グラム以下と予想されていたため、
保育器が用意されていた。
2300グラムで出てきた息子は思いっきり大きな産声を上げ、
主治医が「元気だから保育器いらないね」と苦笑していた。
生後2日で、息子は最後の心エコー。
T先生から「ばっちり、健康な心臓ですね」と言われ一安心。
私に似ず(笑)健康そのものの心臓で生まれてくれた。
私も、出産翌日から歩いたり授乳したり、
他の妊婦さんと変わりなく順調に回復した。
妊娠出産を経験して、伝えたい事
先天性心疾患を持って、妊娠出産を考えている方、将来考えることになるであろうお子さんをお持ちの方に伝えたい事。
それは、
心臓の主治医とよく相談をする事、自分の病状をよく理解しておく事、だ。
私はずっと「完治」と思っていたが(と言われていたし)、軽い弁の漏れや狭窄があった。
日常生活に支障はなかったが、妊娠出産では大きな問題になることだった。
それを知らずに「手術済みです」とだけ説明してしまっていたので、
帝王切開が決まるまでに何度かやり取りが必要になってしまった。
また、先天性心疾患の専門医でない、他の科の医師から、
「よくある心疾患だから大丈夫」と言われることがある。
この言葉、何度言われた事だろう。
でも、人それぞれ病状も違うし、
心臓に奇形があると言うことは、心臓や血管の造りが健康な人と違うことがあるそうだ。
だから、過信をせず、心臓の主治医とよく相談し、
妊娠、出産を進めてほしい。